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プロローグ
「うわぁ……」
小さい頃、俺は両親に連れられて山登りに行った。
山を登っている間は大変だったし疲れたけど、山の頂上で見た『青空』がとってもキレイで……。
「キレイね」
「ああ、蒼もそう思うだろ?」
そんな山を登っていた時の疲れなんて吹っ飛んでいた。
「うん!」
だから、父さんの問いかけにも、笑顔で答えたくらいだった。
あまりにも感動した俺は、その『青空』を見た後もしばらくの間、絵を描くときは決まって『青空』を描いてしまうくらい俺の頭に残っていた――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「…………」
――なんて事があったなぁ。
でもまさか、今度は『こんな状況』で見る事になるなんて……思いもしなかったけど。
それこそ『青空』なんて、晴れさえすれば毎日見る事が出来る。
ただ、普通に晴れの日に見る『青空』とあの日の『青空』は同じモノなのに、時と状況によって、全然違って見える。
今日の『青空』も……本当は毎日同じモノのはなずのに、あの日に見た『青空』とは違う。
「…………」
俺の周りでは何やら騒がしいけど、それすらも遠く聞こえる。
多分、何かしらの事件だか事故だかが起きたのだろうけど……正直、俺は全く何が起きたのか分かっていない。
いや、正確には『何かが起きた……』というのは分かっているけど、一瞬目の前が真っ白になった……と思って気がついたら、この担架の上だった。
「大丈夫?」
そう俺に声をかけてきたのは、救急隊員の人だった。
「お父さんと……お母さん……は?」
そういえば、父さんと母さんの姿が見えない。体を動かして様子を見たいけど、なぜか上手く動かせない。
「!!」
俺の言葉を聞くと救急隊員は、何やら慌てた様子で近くを通ったオレンジ色の服を着た人を呼び止めて話をしていた。
「……」
その間も俺は、キレイな青空を見ている状態のままだった。
こんなにキレイな空なのに……どうして俺はこんな状態なのだろう……そんな重いから、俺は思わず涙を流した。
「…………」
そうこうしている間に、俺が乗った担架が救急車へと移動した。
でも、お父さんとお母さんについては何も言われていない。いや、不安にさせないためにあえて言わないだけなのか。
そして、救急車の扉が閉じられ、青空が見えなくなると……俺の意識はそこでまた、途切れた。
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