3人が本棚に入れています
本棚に追加
ハデスはそこまで言うと、街に現れていた怪物を見て唖然としていた。正確には、怪物の近くにいたものを見ていたのだが。
それは、怪物に戸惑い、逃げ回る人。自分の命を諦め、幼い命を守る為に一生懸命になる人。もう助かるのは無理だと、恐怖に震え、涙を流す人。狂ったように泣き叫び、死にたくないと言う人。その中に1人、怪物を目に留め、走り、飛ぶ者だった。まるで、自分は怪物を殺す事が出来ると、実力を過信した者のようであり、人を守る為に奔放し、怪物を殺すと意気込んだ愚か者のようであった。だが、その者の動きには何か一つの芯のようなものがあり、来ることが分かっていた脅威に、立ち向かうような信念の持ち主であった。その者には、仇を取れるかのような[喜び]があり、倒すという[悲]願が達成できるという心。仲間を殺されたかのような[怒り]があり、そこには…
全ての、どんなに[悲しく]、そして苦しく、とても[怒り]、さらに恐怖を与え与えられ、どんなに[喜び]を感じていても、嘘をつくしかない、そんな出来事を[楽しい]と感じているような、それは恐怖であり、苦しみであり、嘘でもある、だが、世界を魅了するように妖しく…美しい笑みがあった。
そんな者を見た人々からは、恐怖が消え、狂気が薄まり、苦しみから解放されたような表情を感じ取れる。だが、ガラムやバステト、ハデス達からは更に深く、そして感じる事自体が苦しみであるような畏怖を感じる。
「な…何?林斗はただの人間の筈だよ?なのに…どうして私は恐れているの?あの子を…木枯林斗という人間を…」
そこにいる悪魔、神が畏怖を、恐怖を感じている時、その出来事を理解しているかのような、いや、理解している悪魔が…笑みを浮かべた。そして…
「やはり…か。あいつは…林斗はきっと…。この世界を統べる器を持っている…いや…フフ…楽しみだな。素質を複数持ち、全てを知っているあいつがこれからどんな者に成長していくのか。」
その悪魔…アークが呟いた言葉を誰も聞けなかった。
その頃、謎の多い人間。林斗と怪物との闘いが始まろうとしていた…
最初のコメントを投稿しよう!