Unknown

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「ヴェル姉ちゃん。この子…なんかおかしいよ?」 「どうしたのクル。林斗君のどこがおかしいの?」 ヴェルと言われた女性に呼ばれたクル…スクルドという名前の少女は現在を覗き、短き時間を正確に確認する事が出来る。 「この子の現在を見ているんだけどさ。おかしいんだよ。いや、正確には何もおかしい事は無いんだよ。現在の時間はね。私は私達姉妹の中で最も正確に時間を見る事が出来るでしょ?なのに!なのに見た確定の時間が不確定なの!」 「クル。うるさいわ。ちょっと静かにしてくれないかしら?私寝たいのよ。」 「あ!ウル姉ちゃん!ちょっとこの子の過去を確認して見て!」 「…分かったわよ。クルがそんなに慌てるって事はだいぶ異常なんでしょう?その林斗って子は。」 ウルと言われた、女性というには子供じみていて、少女というには妙に大人びた雰囲気の…女性としよう。女性は林斗の過去を、生まれた瞬間から、大人になるまでの過去を覗き見る。 「…なるほど。確かにこれは一大事ね。」 「お前らどうしたんだ?真剣な顔して人の人生を覗くのはお前らにしてはすごく珍しいんだが。」 「ひゃぁ!もう!クロノ兄ちゃん!吃驚させないで!」 「心臓に悪いわ。クロノ兄さん?それよりちょっと確認してくれない?林斗君の過去や現在を見てるみたいなのだけど。」 「あぁ。分かった。」 クロノと呼ばれた青年は、時を操り、林斗の一生を確認する。 「これは…まさかッ!いや!あり得ない!あり得ないんだ!こんな事が!」 「どうしたのかしら。ついに気でも狂ったのかしら?」 「そうじゃない!きっとクルとウルは見たんだろう?この林斗の一生を。いや、林斗の時間を。確信した。この林斗という少年は、複数の時間を過ごしている。だが、この世界以外の林斗は皆、正常で、正確な時間を過ごしているんだ。だが、ここは違う。この世界はirregular。他と比べて不規則で、不確定で、複数の未来や過去、現在が一度に存在している。確かに順番はあるんだ。だが、過去が1、現在が2、未来が3だとすると1や2が複数あり、それが全て一つの3に繋がるんだ。だけど、1が一つのみ、2が複数で3が複数という時間のあり方もある。命あるものは皆運命という一本道を進むはずなのに。まるで運命という名の舞台から外れ、自らがエンディングを決め、気に入らない場合は舞台をやり直す、運命の道化だ。こいつは…〝不明〟なんだ。」
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