感情の道化は舞台の外で演じる

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感情の道化は舞台の外で演じる

「こいつはなんで動かないんだ?」 林斗は宙を歩き続ける。だが怪物は反応しない。いや、反応はあるが興味を持たない。まるで何かを狙っているように、まるであるモノを探しているように。 「うーん。倒すと意気込んだはいいけどなぁ。流石に邪魔したら怒るかな?」 そう言って林斗は怪物の目の前に移動する。その怪物は異形の生き物であった。人型で、本来目があるはずの穴には大量の触手が蠢き、本来口がある場所には大きな腕が生えている。その腕には大量の目が付いており、全ての目玉は一点を見つめている。「うげげ。クトゥルフだよねこれ。これ完全にクトゥルフだよね。」 その怪物の手の平には口がついていた。その口は常に何かを呟いている。腕があるはずの場所には人間の塊のようなものが呻き声を上げていて、足がある場所には触手が生えている。 「クトゥルフだよこれ!ほぼクトゥルフ!え~僕こんなクトゥルフと戦うの?こんなの相手にならないけどさ。こんな気持ち悪いの嫌だな~。」 その怪物はどこかに向けていた目玉を林斗に向けた。 「ひっ!!怖!」 「邪魔ダァ~ァあァ…!ジャまをすルナぁアぁァ…!」 「うん。やるしかないんだよね。」 そういうと、林斗は〝鍵〟を取り出した。 「この力は久しぶりだなぁ。使えるかな?第0の鍵!The key to temptation!能力発動!決定権!第1の鍵!Time key!能力発動!時間操作!」 林斗は空に向かって1の鍵を、自分に向かって0の鍵を、錠を開けるように回した。 空から時計のようなものが落ちてくる。針は回り、止まらない。止まることはない。 林斗から闇が出る。それは誘惑するかのように林斗を囲む。そして…林斗は呟く。 「…暗く暗い我が世界。」 闇は誘惑をやめ、霧散するように消えていく。闇が晴れるとローブを着た林斗が現れる。それはまるで、命を管理する死神のようであった。 「僕の誘惑はどうかな?決定権。[お前は命を失う]。」 そういうと、怪物は呻き、苦しんだ素振りを見せている。だが、命を落とすことは無い。 「あっちゃぁ!久しぶりだっからミスっちゃったっす!」 そこに怪物は触手を伸ばす。普通なら避けれないはずの密度、数だが林斗が手を伸ばすとそこにあったはずの触手は消える。 「殺~スゥウうゥ!こロシてやる~ゥぅうう!」 「そんなに慌てたら当たるものも当たらないよ?まあ僕に当たるものすら無いけどね?」
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