感情の道化は舞台の外で演じる

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林斗に近づこうとした触手は、全て林斗の能力によって消えていく。だが、その能力を持った林斗は油断があり、隙もあった。そしてやられそうになった時、防ぐ範囲を移動させる。それは危ないような、それでいて互角で、怪物の一方的な戦いであった。 「大丈夫なのか…危ない場面が増えてくるぞ…。」 「大丈夫じゃなさそうだね。だんだん触手が増えていってる。このままだと絶対に攻撃されるよ。それに、あれの一つ一つがみんな致命傷になる攻撃だから…」 「あのままじゃと死ぬ…か」 街の中で戦いを傍観していた8人は悲しげな表情を浮かべていた。否、その2人は違った。 死神と人形遣いだけは、もう諦めたかのような、決意の表情を浮かべた。 「…アスタロト。飛べる憑代は持っておるか?」 「持ってるなの。だけど一つしかないの。目的は果たして来るなの。ハデス様。」 アスタロトは鳥の形のものに命を込め始める。 「何を言ってるの!?私達にあれは関係無いのよ!?あんな人間…なん…か……」 バステトは泣き始める。だが、それが分からないという顔をする。 「なんで…なんで人間ごときが死ぬってだけなのに!あの子が死ぬと考えると涙がでるの!」 それは、驚きではなく、怒りであった。なぜ人間の死を悲しむのか、ではなく悲しむはずはないという。 「儂たちにもわからない。じゃが、儂はあいつを死なせたくない。儂は行くぞ。」 「準備できたなの…じゃあ頑張ってくるなの!死なないように、なの!」 「大丈夫じゃ!…バステト。」 「…何?まさか死んだら後はよろしくとかじゃないよね?」 バステトは恐る恐る聞く。その心を、決意を信じたくないという様子で。そしてハデスは鳥に乗る。そして、笑顔で言葉を発した。 「フフ。もし死んだら、私の形見の半分は林斗に渡して?バステト。あ、もし林斗も死んじゃったら林斗と一緒の墓に入りたいな。」 ハデスは行った。意味も分からず、助けたいと思うその人の為に。理解をせず、想うと胸が痛くなるその人を救う為に。そして、友の為に。 「…ハァ。世話の焼ける人です。そのまま行かせたら林斗になんと言われるか…」 そう言い、ハデスの後をアークはついて行く。全ては謎の多き主人を悲しませまいとする契約の為に。
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