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「…ハデス?どうしたの?ハデスは命を操れるんでしょ?自分の命を操れば死なないでしょ?早く…早くしないと死んじゃうんだよ?」
林斗は恐る恐る話しかける。
「ハハ…わかってるでしょ?林斗。命を操れても体の欠損を治す事は出来ないんだよ。」
消えてしまいそうな声でハデスは言う。
「まさか林斗と会って5日で死んじゃうなんてね…。林斗はアンラッキーボーイだね……」
「なんで…僕がアンラッキーなのかな?」
泣き出したい感情を抑え込み、いつも通りに会話をする。
「私はさ…?君に惚れてたみたいなんだよね…。さっきまでは分からなかったけど…今、君に抱えられて…幸せなんだ…。フフ。おかしい…よね。死にそうなのに幸せだって…。林斗は…君のことを好きな女の子を…失っちゃうんだよ?だがら…君はアンラッキーなんだよ。」
「ハハハ。今更そんなことを言われても…嬉しく…ないよ…っ!もうちょっと…早く…。教えて欲しかった…な?」
林斗はハデスと話しながら、会ってたった5日しか経っていない女の子と言葉を交わす。我慢できずに流した涙は、ハデスの中心に空いた穴に落ちていき、血に落ちて混ざる。
「そんなこと…言われても…今…自覚したからね……。せめて…林斗と仲良く過ごしたかったな…。…駄目だね…意識が…消えかかってる…。林斗…顔を近づけて…。」
林斗は言われた通りに、顔を近づける。
林斗の顔に向かって、色を失った腕が弱々しく動く。そしてハデスは、最後の力を振り絞り林斗の口に軽く口づけをした。
「えへへ…林斗……。神からキスをされた…人間は君が初めて…だよ?これから…そのことを誇って、生きてね?死んだら…容赦…しないから…ね……」
ハデスは言い終わると、まるで糸が切れたように、腕をだらんと垂らす。顔から生気が無くなり、穴からは何も、血すら出てこない。
「ハデス?ほら…起き上がって?ハデス?」
ハデスは動かない。話しかけようが、揺らそうが、キスをしようが反応は全く無い。
「…死んじゃったんだ…。待っててね。ハデス。あいつを倒したらちゃんと供養するからね。」
そういい、林斗はハデスを、戦いを見届けていた人に預ける。その人は、嫌な顔はせず、まるで自分の物かのように大事に抱える。2人は初対面だが、頷き合い、まるで仲のいい友達のように、または長年共に戦ってきた仲間のように接する。林斗は感謝をし、決意を固める。怪物を倒す決意を。
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