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「刃のルートと炎のルート?」
フロア内は想像とは違い、かなりのリアルさ。ここが田舎のデパートだってことを忘れてしまうのに、時間はかからなかった
しばらく歩いてぶち当たった壁には標識。オレたちをどちらか一方へ誘おうとしている。
「アタシ、熱いのキライだから、刃のルートにしない?」
ミサは世界観を無視した脳天気な理由で、刃のルートへとオレの手を引っ張った。
「ウッ!」ふいに右の肩に痛みが走った。
鋭利な刃物で切られたような熱い痛み。暗くてよく見えないが、シャツの右肩部分が裂けていて、血が滲んでいるようだ。
「ミサ! ちょっと待ってくれよ。刃のルートって、マジの刃が飛んできてるぞ……」
「だから言ったじゃない! 超リアルな脱出ゲームだって」
リアルの意味が違うだろ。ケガを負わせて大丈夫なのか? ズキズキと痛む肩を押さえながら、先を行くミサを追いかけた。
最悪の事態は五つ目の標識を曲がった時に起こった。オレたちが選んだのは、絶望のルート。ここに辿り着くまでにも、信じられない出来事がたくさんあった。心の中で何度も──出してくれ──と叫びそうになった。さすがのミサも、落とし穴に落ちて足を痛めてからというもの、恐怖でずっと黙ったままだ。
放心状態の二人が絶望のルートの標識に従った瞬間、背後から唸るような声が聞こえた。振り向くとそこには、ナイフを手にしたゾンビの姿。ミサを襲おうと迫ってくる。
「やめろ!」
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