リアル脱出ゲーム

3/3
99人が本棚に入れています
本棚に追加
/139ページ
 ゾンビが持つナイフがミサの背中に食い込んだ。ゾンビはすぐにナイフから手を離し、甲高い奇声をあげながら走り去った。怖くて声も出ない。ミサに突き刺さったままのナイフを見て、オレは泣き出しそうになった。  逃げなきゃ。オレはミサを背負い、全力で走った。涙で目の前の景色が見えない。次の標識が現れたが、左のコースへ誘う文字しか見えなかった。  それは滅亡のルート。矢印に従い体を傾けた瞬間、激しい振動が館内を襲った。会場内の装飾も振動で崩れて行く。壁には亀裂が走り、地鳴りが響いた。オレが選んだのは滅亡のルートだ。これまで起こった悲惨な出来事が、地球の滅亡をリアルに予感させた。これは死ぬわ。間違いない。地球が滅ぶんだ。  そういえば、入り口でスタッフが言ってたっけ。地球が滅びそうになったら、「オレは地球を救う英雄だ!」と叫べって。アホらしい。そう思い、聞き流していたけど、今はアホらしさにさえすがりたい。朦朧とした意識のまま、オレは叫んだ。 「オレは地球を救う英雄だっ!」  願いが通じたように、揺れが一瞬にして収まった。館内の照明が一斉に灯される。眩しさで閉じた目をゆっくり開くと、そこにはスーツを着た女性の姿が。何が起こったのか、思考が追いつかない。 「見事、合格ですね! 『サバイバルの世界でも彼氏は生き残れるか。ザ・結婚適正試験』。彼女が申し込まれたんですよ。標識に弊社のロゴが印刷されていたでしょ?」  そんな冷静にロゴなんか見てねぇよ……。  背負ったままのミサを振り返る。おどけた顔。ミサはペロリと舌を出した。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!