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「いいえ。私のお願いはそうじゃないんです」
島田は虚を突かれ、ポカンと口を開けた。
「どうにかして、私の妻を殺してきて欲しいんです」
「殺す?」
「はい。そうすれば、あいつもこっちの世界に来ることができる。向こうの世界に一人ぼっちで残しておくのはあまりにも酷すぎる。いっそのこと、家族揃ってこっちの世界で暮らすほうが、幸せだと思うんです」
サトナカの決意に押され、その依頼に合意すると、島田はホームに到着した列車に乗り込んだ。
「ご主人さんよ……」
お盆が終わり、こっちの世界に帰ってきた島田は、サトナカを見つけるなり声をかけた。
「うまくいきましたか?」
「それが──」
島田は俯き、口ごもった。
「あんたのカミさんは、他の男とよろしくやってるよ」
「他の男?」
「どうやら、ホームからあんたを突き落としたのも、車で子供をはねたのも──他の男と一緒になりたいと望む、あんたの奥さんのようだな……」
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