第1話

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彼の住むアパートは8畳1間のお風呂無し、トイレは共同の部屋が2人揃っての出発だったのです。 「ごめんな、トイレ位付いてる部屋にしたかったんだけど」 「平気、平気、一緒に居られるんだもん、これでも贅沢だよ」 2人、汗水流して働いた。施設の出と言うだけで、どんなに頑張っても!頑張っても!仕事仲間の中では最低賃金で働きました。 少しでも愚痴を言うと、 「辞めてくれても良いよ」 と言われました。後ろ楯の無い施設出の私や彼に取っては逆らえない言葉だったのです。 此処を辞めさせられたら次を探すのが大変だと身に染みて知っていました。そんな事位には慣れっこになっていました。 施設の子と言うだけで石を投げられたり、苛めにもあいました、子供の頃に比べたら帰る家が有り、大好きな人が待っていてくれる自分達の家が有ると言うだけで凄い幸せでした。 そんな2人にも、ささやかでしたが2人一緒に近くの銭湯に行き、出る時間を合わせてポカポカに温まった手を繋いで我が家へ帰る。 贅沢は出来なかったけど向かい合って、お喋りをしながら温かいご飯が食べられる。 そんな私達の楽しみはコツコツ貯めた貯金で1年に1度、1泊2日の旅行でした。 豪華なホテルには泊まれませんでしたが1泊何千えんかの民宿に泊まり、将来の夢を1つの布団に入り夜更け迄語り明かしたものです。 ?3へ続く
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