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そのときだった。
「筑波君。
諦めるのはまだ早いよ」
黒いスーツをビシッと着こなした、美形の若い男性が部屋に入ってきた。
「しょ、所長!」
綾菜は心の内で首を傾げた。
―この若い人があの話題の所長?
「あ、これは突然失礼しました。
私、所長の『白石 零弐』と申します」
そう言うと、零弐は綾菜に名刺を差し出した。
「は、はぁ」
「ところでお尋ねいたしますが、不倫相手に心当たりはおありですが?」
そう言われると、綾菜は何かを思い出したように顔を明るくした。
「そう言えば、主人の同僚の永良さんが、主人が同じ部署の三井さんの家に出入りしているみたいなことを言ってた気が。
主人はいつもオーダーメイドの革靴を履いているんですけど、それを三井さんの家に急遽訪れたときにそれを玄関先で見たとか」
「なるほど。
では、その線で捜査をするとしましょう。
じゃあ筑波君、あとは頼んだ」
「はい!」
そう言うと零弐は入ってきたときと同様に、颯爽と部屋の外に消えていった。
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