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「では、まず具体的な調査方法なんですが、その三井さんという方のご自宅は何処にあるかわかりますか?」
筑波はさっきとはうってかわって明るい表情である。
「えぇ。一度主人が病気で会社を休んだときになんか書類のようなものを届けに行ったことがあるので」
一方の綾菜も、これで夫の不倫が証明される可能性が増えたのかと思うと、少し安堵の表情を浮かばせている。
「ではその家の付近で私どもが待ち伏せをし、ご主人が三井さんのご自宅に入ったところを写真で撮ってそれを証拠にする、というような方法でどうでしょうか?」
「ありがとうございます!!
一応、これは主人の普段会社にいくときの様子です」
どこからかこのために隠し撮りしたのであろう、スーツ姿の綾菜の夫の全身が写真として写っている。
「ありがとうごさいます。
この革靴が…」
「例のオーダーメイドのものです。
ちなみに、主人はやたらとオーダーメイドのものが好きで、分かりにくいですがスーツもそうですし、この腕時計も色の組み合わせは主人が決めたものなんです」
「なるほど、それではこれらオーダーメイドのものが写真に写り込んでいれば、たとえ顔を隠していたとしても証拠にはなりますね。
わかりました、それでは早速明日から調査をしようと思いますので、三井さんのご自宅の場所だけ教えていただけないでしょうか?」
そのとき、綾菜はふと不安げな表情を浮かべた。
「調査料はいったいどれくらいで…?」
「御心配なさらず」
筑波はそう言うと微笑みを浮かべて言った。
「交通費などの実費を除けば、成功報酬の10000円でけっこうです。
慰謝料をもらえればまず、問題ない額でしょう」
「ありがとうごさいます!」
綾菜はそれを聞くと、すべての不安が取り除かれたのか、満面の笑みを浮かべた。
このときはまだ、筑波も綾菜も知らなかった。
この、倫理に反すること、不倫の証明は
思いの外難問であったことを。
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