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「カメラの扱い、慣れてるね。写真とかよく撮るの?」
「ええ、どこに行こうとも写真を撮ったものだわ。夢中になりすぎてあなたみたいに怪我しそうになったことも何度もあるけど」
「ははっ、君もそうだったのか。じゃあ、今日もこの桜を撮りに?」
「そうね……そんなところよ」
彼女はどこか宙を見つめるような目をしながら呟いた。が、すぐに視線を僕に向け、問い掛けてくる。
「ねぇ、桜がこんなにも綺麗に咲くのはなんでなのか考えたことある?何かが埋まっているっていう話もあるけれど、何だと思う?」
「……屍体?」
彼女は面白い、と言わんばかりに目を爛々とさせた。
「良い答えね。あなた、文学も好きなのかしら」
「まぁ、有名なものは読んでいるよ」
見ず知らずの人に褒められるのも悪くないと考えつつも、照れる心を隠すように空を見上げて話を続ける。
「あの考え方、僕は結構好きなんだ。不気味な美しさってやつかね。空想の話だけどもし本当にそうだったら、ってつい考えてしまうんだ。」
やんわりと微笑みながら聞いていた彼女は少しの間を空け、口を開いてポツリ。
「案外、空想じゃないかもよ」
「え?」
何のことかと彼女の方を向くと視線合う。
眼鏡の奥から吸い込まれてしまうような瞳を覗かせている。
なぜだか、そのまま目を離せずにいると、彼女は徐に語り始めた。
「これは、ある女の子の悲しいお話」
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