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あれはそう、全ての生命が春を謳歌しているのではないかと思う程に気持ちの良くて清々しい日だったそう。公園では桜が大いに咲き乱れ、人々は桜の木の下で飲めや歌えやと大盛り上がり。
女の子も例外なく桜を見に行こうとした。女の子もまた、風景を切り取って眺められる写真が好きだった。だからその日は美しい桜で溢れている公園で、気の済むまで写真を撮ろうとしていた。
しかし、普通に撮っては面白くないと考えた女の子は、夜更けの誰も居ない時間に撮りに行くことにした。
夜更けを待ち家族に怒られないようこっそりと家を出た女の子は、お気に入りのカメラを首から引っさげて、揚々と公園へ出掛けて行った。案の上公園には人っ子一人居らず、春の冷たい空気が女の子の紅潮した?を掠めていく。闇にパッキリと白い花弁を浮かばせている桜を見た彼女は人知れず満面の笑みを浮かべ、早速自分だけの撮影会を始めた。
人が居ないこともあり、色々な角度から撮ったり、寝転んだりと自由に撮影を楽しんでいた。終いには木に登って撮った。
いつも見上げていた桜から見る、地上を見下ろした風景はどんなものだろう。ふと湧き上がった一時の興味に突き動かされ、女の子は木の中腹を目指して再び登り始めた。かなり立派な木なので、中腹でも結構な高さになる。そこから見下ろす風景は、普段とは異なる目線の高さと桜に包まれる安寧感といい、女の子を満足させるに足るものだった。
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