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「で。その話から察するに…。
俺らの子供、ここにいるんだ?」
一郎さんは、愛しそうにそっと私のお腹に手を当てる。じんわりと伝わるその温度が嬉しい。
ねぇ、赤ちゃん。
パパの手の温かさが伝わるかな?
目が合うと、彼はほにゃっと嬉しそうに目じりを下げた。膝をつくと、耳を押し当てている。
「まだ動かないし、何も聞こえないよ。
見えるか見えないか位の点、って大きさだもん」
「じゃ、今は細胞分裂の真っ最中かな。
1個が2個、2個が4個、4個が8個、8個が16個………」
………確かにそう増えてくんだろうけど。
これ、どこで止めたらいいのかな?
一郎さんの暗算、やたら速くてもう2048個まで増えてしまった!
「……そろそろ分裂、止めませんか?」
「……4096個が8192個……じゃ、今回の暗算練習はここまで」
どうやら胎教のつもりだったみたいだ。
きっとパパに似て、計算の得意な子になるかも。
「予定日、いつ?」
「7/7、七夕の日だって」
早く、会いたいな。
待ってるよ。
二人で代わる代わるお腹に話しかける。
大好きだよ。楽しみだよ。
だから、その日まで、待っててね。
[Fin.]
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