終幕世界

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 ユーシャとマオは崩落した空の修復を行った。空の欠片を砕けた空にパズルのようにはめていく。空色一色のパズルは難解で、どのピースをどこに配置するかで二人は幾度となく衝突した。その度にマオは必ず逃げに徹し、ユーシャが呆れて攻撃の手を止め、互いに殺気を漂わせたまま修復を再開した。  目につく穴が一通り塞がり、空に走る亀裂がなくなると、ようやく二人は魔王城に舞い戻った。 「それで、やる気は出たのか?」  触れた魔族を一瞬で消滅させる光弾を放ちながら、ユーシャが訊ねる。 「いや、まだだな。とりあえず湖の干ばつの件はいいとして、鉱山が崩落した件もある」  玉座の間で乱れ飛ぶ光弾を躱しながら、マオが答えた。  ユーシャの目的は魔王ただ一人。無数の光弾は周囲の魔族たちを避け、器用にマオだけを狙う。狭い部屋で器用に避け続けるマオの前に、側近のドライアドが歩み寄った。ドライアドが両手を広げると、大理石の間から植物が一斉に伸び、光弾とマオの間に立ち塞がった。  光弾は樹々を根こそぎ焼き払うも、次々と伸びる枝葉についに一つ残らず掻き消される。ユーシャが思わずドライアドを睨みつけると、彼女は優雅に一礼してみせた。 「申し訳ありません勇者様。魔王様が落ち着かれないと、私どもの報告が滞ってしまうのです。玉座の間での戦闘はご遠慮願えますでしょうか」  魔族だというのに丁寧な物腰のドライアドに、ユーシャは返事をしなかった。相手はたかだか魔族一匹。邪魔をするなら殺しても構わない。けれどユーシャは編みかけた魔法を解いた。魔王以外を殺すことに、興味もなければ意味もない。  ドライアドは黙するユーシャに静かに一礼すると、マオに向き直った。 「ご報告申し上げます」  ドライアドが報告を始めると、同じく魔王に用向きがある魔族たちが列を作った。光弾の間で右往左往していた魔族たちは、ユーシャに非難の目を向けるでもなく、静かに列に並んでいる。玉座に腰を落ち着かせたマオは報告を上げたドライアドを補佐に、他の魔族たちの報告に耳を傾けた。そうなってしまえば、ユーシャにできることはない。興味を失ったユーシャは城内を勝手に散策することにした。  すれ違う多種多様な魔族たちは、一様に忙しく動き回る。城内を勇者が歩いているにも関わらず、誰もそのことを気にも留めない。魔王城のその光景と、自身の王城をユーシャは比較した。
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