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この世界は初めから終幕が決まっている。
青い蒼い広い海。その海が生み出す無限の波。その波が立てた飛沫。その余波から出た夢幻のような水泡。
そんな小さな泡のような不安定な世界。
泡の最期は、誰だって知っている。
崩壊していく小さな世界。そこには人間の王国と魔族の王国があった。いつからそんな立派な城が建っていたのか、いつからそこに自分が住んでいたのか知る者はいない。
そこで私は勇者だった。勇者の使命は至極単純。魔王を倒すこと。魔族の王国に行った人間はいないが、そこに魔王がいることは誰もが知っていた。そう言い伝えられているからだ。
この世界は滅亡するでしょう。
放っておいても自壊するでしょう。
それは魔王のせいではありません。
この世界が小さく脆いためです。
この世界の終幕は決まっています。
勇者と魔王が殺し合うのです。
勝者はどちらか決めていません。
それはこの世界の住人に委ねましょう。
ただし、この世界が終わるという点だけは変わりません。
崩壊の進んだ世界で、勇者と魔王がぶつかり合う衝撃で、この世界は終幕となります。
さあ皆さん。
この世界で精一杯生きてください。
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