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だが決定的な気持ちがなかった。気持ちがないのだから集団お見合いにも参加する意欲もなく桐子の周りには合コンをセッティングする役をかって出てくる子もいないので(いたとしても自分を誘ってくれるとは思えない)当たり前に出会いはない。
四十代からみればまだ三十歳にもなっていないのならいくらでも出会いはあると思われるかもしれないが年齢など関係ない。気持ちも本格的な興味もないのだから。
お金に困っているわけでもなく仕事が忙しいわけでもない、だったらこのまま定年まで働いてその後は趣味を見つけてそれに没頭しながらくらせばいいのではないか。そのほうが気楽だ。
決して明るいとはいえないが桐子は近頃そう考えるようになっていた。
だが、そんな時だった。彼に出会ったのは。
桐子は電車通勤で毎朝込み合った時間をさけるため二本早い電車に乗ることにしている。それでもわりとサラリーマンや学生はいるのだが、ピーク時に比べれば座ることもできるし人に押しつぶされないので快適だ。
この辺りは中学も高校も大学も線路沿いにあるので学生の数はとても多くなる。しかも高校は桐子が知る限り五つもあるので必然的にいろんな制服の高校生を目にすることになる。
地元ではないので高校の名前はわからないが都会のせいなのかここら辺の高校の制服はおしゃれな感じでどんな子が身に着けてもすらりとスタイル良く見えるものばかりだ。
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