夢遊病

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夢遊病

 私はたぶん夢遊病だ。おかげで昨日の記憶がない。  昨日1日私はたぶん眠ったまま過ごしたんだと思う。でも部屋はきれいになってるし、洗おうと思っていた洗濯物も清潔になって片付いている。  おまけにアイロンがけまでしてあって、冷蔵庫と生ゴミから察するにいつもよりきちんと料理をして、いつもよりきちんと食事をとっている。  起きている時の私よりなんだかとても優秀だ。  おまけに眠ってしまった日のカレンダーには青い点が書き込まれている。おかげで今日が何日で、どれだけ眠ってしまったのか迷わずに済んでいる。  そんな配慮ができるほど眠った私はしっかりしている。なのに何も覚えていないのはとても奇妙だ。  そのせいか困ったことは一度もないけれど、一番ひどい時は一週間も眠っていたのでいつ夢遊病になっても良いようカレンダーには印をつける。  私がいつ眠ってしまって、いつ目覚めたのかわかるように。仕事に行かなきゃならないのに何だかとても清々しい朝だ。 「あれ…なにこれ」  0401となぞってiPhoneを開くと見知らぬ猫の画像があった。たしか眠ってしまう前は人間だったはず。  白くてふわふわの猫がどうにも愛らしく潰れた顔でごろりとマットに伸びている。ピンク色の肉球で手のひらをパーの形にしてこれ以上ないリラックス。  これはこれでなんとも癒される。なんかよくわからないけど 「まあいっか」と私はつぶやいた。
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