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 今日も眠たい。僕は遅刻ギリギリでたどり着いた高校の席に腰かけた瞬間、そう思った。  眠気の原因は何なのか、何故こんなにも眠いのか。そんなものは分かり切っている。僕が昨日夜遅くまでネトゲに励んでいて小テストの勉強を忘れ、朝の四時からひたすらワークを進めていたからだ。全く釈明の余地もなく、百パーセンント自分が悪いクソみたいな理由だ。  いや、僕は悪くない。毎回アップデートを小テスト前日にやるアナストの運営が悪い!僕は無罪だ!    アナスト。Another archive StoryというRPGの略称だ。 伏線が複雑に絡み合うストーリー、個性的で魅力的なたくさんのキャラクター、戦闘パートでの操作性。  システムこそはそこら辺のゲームと変わらないが、全てが超一流の知る人ぞ知る神ゲームだ。  僕はこのゲームで「キオ」というアカウントを持っていて、毎日欠かすことなくプレイしている。  ちなみに「キオ」は自分の本名から来ている。   九ノ瀬冬真。冬。冬に降るのは雪。雪はギリシャ語でキオーン。これで頭の二文字だけとったらなかなかそれっぽいしカッコいいのではないか。  割とそのまんまで安直な理由ではあるものの、僕はこのユーザー名を気に入っている。  っていうか雪。まだ雪降らないのかな。そりゃあまだか。全然冬じゃないもんね。  眠いからなのか、なんだか思考が脱線し始めた。  今日の一限は世界史だった。  世界史は睡眠者を出す筆頭科目だ。多分世界の歴史をずっと語っているからひとつのストーリーをずっと語る映画に似たものを感じてみんな寝てしまうのだろう。  みんなで寝れば怖くない。  僕は授業開始早々、目を閉じた。
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