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武藤君は、お母さんの最期の歌を届けてくれた。
彼はいつも、私の大事なものを届けてくれる。あの時もそうだ。お母さんの誕生日のお祝いをしようとして、色々と買い込みすぎて持ちきれなかった時、何も言わずに家まで運んでくれた。
偉ぶることもなく、恩着せがましくもなく、でもお礼もさせてくれない。どうしていいか、わからなかった。
だから今日、お礼を言えて、良かった。きっとわかっていないだろうけど、2回分言えた気がした。
お母さんの手紙が、最後に勇気をくれたんだ。だからこれからもう少し、頑張っていこうと思う。
武藤君は覚えていないみたいだけど、手紙には最後にこう書いていた。
『むすぶ手の しずくににごる 山の井の あかでも人に 別れぬるかな』
『年のうちに 春は来にけり ひととせの 去年とやいはむ 今年とやいはむ』
『うたた寝に 恋しき人を 見してより 夢てふものは 頼みそめてき』
『くらべこし 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして 誰かあぐべき』
『村雨の 露もまだ干ぬ 槙の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮』
『かち人の 渡れどぬれぬ えにしあれば またあふ坂の 関は越えなむ』
『筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに』
『来むといふも 来ぬ時あるを 来じといふを 来むとは待たじ 来じといふものを』
『いとせめて 恋しきときは むばたまの 夜の衣を 返してぞ着る』
『今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな』
『願わくは 花の下にて 春死なん そのきさらぎの 望月のころ』
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ムトウクム(ン) カッコイイネ!
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