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1枚目にはただ一つ、こう書かれてあった。
あらたのし
思いは晴るる
身は捨つる
浮世の月に
かかる雲、あり
「……何ですか、コレ?」
「大石内蔵助の辞世の句よ」
「忠臣蔵の四十七士のトップだよ」
「母さんが一番気にってたやつだ」
なるほど、侍なんかが死ぬ前に詠む歌か。
自分が死んだときにもその歌を使うとは、よほど気に入ってたんだな。もしかして、満を持して使えるとか思ってたんじゃ……?
「きっとコレ、言いたかったんだなぁ」
「ええ? これ書いたら自分の手紙だって証明できるから書いたんじゃないの?」
どっちも、だろうな。
「でも変じゃない?『かかる雲あり』って」
「本当だ。実際には『かかる雲なし』だったな」
「そ、そうなんですか……」
どっちでも、違いなんてわからない人間なんだから帰っちゃダメだろうか。
「きっと、心残りがあるんだよ。それをこの後のページで言ってるんじゃない?」
園崎さんが、力強くそう言うと、園崎父・弟は力強く頷いた。
次いで、3人の視線が俺に向く。
「は、はい」
俺も頷かないと進まないシステムになったらしい。
こうして、一緒に次のページも見ることになった……。
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