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「あの……これ、何なんですか?」
「え? 色んな歌の寄せ集めだけど?」
「どの歌集とか?」
「色々入ってるなぁ、万葉集に古今に……」
「つまり規則性がないってことですか」
だったら本当に、ただ単に好きな歌を最後に並べただけなんだろうか。まぁ、これだけたくさん思い出しただけでもすごいんだ。この上、何か仕掛けを施すなんてことは難しいだろう。あまり時間もなかったし……。
でも、言い終わった後、なんだかすごくやり切ったって感じの顔をしていたような……。あれは、単に並べたてただけなんだろうか?
「ああ、この歌……明智光秀の辞世の句だ。泣けるって言ってたなぁ」
「細川ガラシャの辞世の句もいいよね。なんか高潔な感じで私も好き」
「古典が多い中に三島由紀夫が混ざってるのも渋くて母さんらしいよな!」
どれが何の歌か、区別ついてるのか、この人たち……落ち着いたら聞いてみようかな。
「ねえ、武藤くんはどれがいい?」
「え」
そんな3人揃って見つめられても……俺は古典は赤点ギリギリ人間ですよ。
しかし、何か言わなければ進まないらしいことはわかってきた。
「こ、これかな。何か聞いたことあるし」
「これは……百人一首にも取り上げられた持統天皇の歌! いいねぇ、君! いいよ!」
「は、はぁ……」
何がいいのか、説明……はいいから早く帰りたい。
「あの、それよりこの手紙なんか意味があるんでしょうか?」
「え、母さんの好きな歌BEST〇〇とかじゃないの?」
「それにしたら中途半端な数だし。色々混ざってるみたいだし。何かあるのかなって……」
「う~ん、気にすることもないと思うけど……あああぁっ!!!」
「どうした!?」
いちいち叫び声が大きい園崎さんは、わなわなと震えながら手紙をじっと見つめていた。そして、みんなに見えるように指で指した。
「これ……並びが、五七五七七になってる……!!」
「な、なんだって……!?」
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