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「もしかして、この並び……一つの歌を指しているんじゃないか?」
「どうやって?」
その時、ふと夢の中での会話を思い出した。確か園崎母は『の』が足りないとか『り』がないとか、唸っている時があった気がする。もしや……
「……頭文字だけとってみるとか?」
迂闊に口にしてしまったのが間違いだった。俺のその一言に『なるほど』という顔をした3人は、いそいそと鉛筆を用意して、俺に持たせた。
俺が書き出すのか……。
「え~と……『ち』に『よ』に、『ち』『よ』……これは……?」
「『に』だね。にきたつにの『に』」
「はぁ。じゃあ次は……『こ』『と』……『ご』?」
「いや『の』だろうな」
「ど、どうも……」
わかるんなら、あなた方が書きませんか……。なんで俺、書記になってんの……?
その後も一家の指導を受けて、なんとか頭文字を書き出すことができた。出来上がった文字は……
ちよちよに ことのはあまた かねとも わことなき ついそくやしき
「何じゃこりゃ?」
思わず口にしてしまった。ご家族の前で……と思ったが、案外気にしていなかった。それよりも、この歌もどきを読み解く方に夢中だった。
「おかしい。短歌の文字数にならないぞ」
「それ以前に、これ誰の歌ですか?」
「わからんなぁ。聞いたこともない」
「ものすごくマニアックか、母さんの創作か……」
「とりあえず、わかるところを漢字にしてみたら何かわかるんじゃない? ほら、この『ちよ』とか、『千代』じゃないかな」
「でも2つあるなぁ」
「重ねてるとか?『千代千代』とか」
「どんな言葉だ? 千代って長い年代だっけ? むっっっっっちゃ長い間って意味?」
「そう……かも」
それでいいのか。
「こっちの方がわかりやすくないか? 『ことのはあまた』って、『言の葉』と『数多』じゃないか?」
「ああ、なるほど」
「じゃあこっちは、『悔しき』じゃない? 『ついそ』はわからないけど」
千代千代に 言の葉数多 かねとも わことなき ついそ悔しき
……やっぱりわからん……。
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