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「何が悔しいんだろう?」
「めちゃくちゃ長い年代で、言葉がたくさん……て言ってるか?」
「ていうか……この中途半端にくっついてる『の』は何だ?」
『君が為め~』の後に、謎の『の』一文字がくっついている。妙な存在感を放っていて、不気味だ。無視してはいけない気がする。
「つまり、『わことなきの』ってこと?」
「何でこれだけひらがな?」
「……『の』で始まる歌をそれ以上思いつかなかったんじゃないか?」
「ありえるな」
けっこう適当だな……。
夢でのやりとりでも何度かそう思った。例えば……そうだ、『り』がないから何とかって言っていたな。結局どうしたんだったか?
くっつけてしまえば、とか……
「ああっ!」
「ど、どうしたの?」
「あ、いや、その……『り』がつくって言ってたような……」
「『り』? どこに?」
「確か……そこだけ2文字とるみたいなことを……」
「もしかして『かねとも』? 『かりねとも』になるの?」
「ああ、そんなこと言ってた気がする」
園崎さんが横から文字を書き足し、じっと睨んでいると、何かひらめいたように目を見開いた。
「『借りねども』じゃないの? それで、『わことなきの』は『わが』まで抜いて、『わがことなきの』になるんじゃない?」
「ああ、そうか。でも『わが事なきの』って何だ?」
「前後の繋がりを考えて……お母さんが普段から言ってたことも踏まえたら……『わが言なきの』になると思うの。それで……こんな歌になるんじゃない?」
千代千代に 言の葉数多 借りねども わが言なきの ついぞ悔しき
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