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それは大学の女友だちの手に触れた時だった。
いきなり黄緑色のワンピースの映像が頭に浮かんだ。
後日その友だちが來夢の見た映像とまるで同じワンピースを着て彼氏と一緒に歩いているのを見た。
そのときは何も思わなかった。
自分の見た映像と友だちが着ているワンピースが全くリンクしなかったから。
ただそれを見た。
という記憶だけその切り取った瞬間だけを來夢は何度も思い出す。
その後もいくつか似たような経験があったはずだがそれらは覚えておらず、その黄緑色のワンピースだけをよく覚えている。
來夢が自分の見る映像を意識するようになったのはゼミのコンパで偶然隣に座っていた男子学生に触れた時からだ。
そのとき死体が見えた、はっきりと。
周りの学生たちはほとほと酔っ払っていて、來夢も同じだった。
酔いの勢いに任せて「死体が見えるー」來夢は冗談半分に男子学生の頬を突いた。
泥酔一歩手前といった男子学生は「おれ、死体が好きなんらよぉ」とろれつの回らない舌で答えた。
その後なぜか彼の人生相談をすることになった。
死体愛好者であるという彼のその嗜好を悪い方に使わずに良い方に使うにはどうしたらいいかということを延々と話し合った。
2人とも酔っ払っていたので同じことを何度も繰り返した。
で、悪い方向に使うと犯罪に手を染めてしまうかもしれないその嗜好を良い方向に使う結論として出たのが、死んだ人を棺に納める納棺師になるというものだった。
「おくりびと」という納棺師の映画があったのでそれを見るように來夢は彼に命じた。
2次会のカラオケに行く道中2人は肩を組み「おくりびと!おくりびと!」と連呼した。
その後彼は本当に納棺師になった。
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