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「塾?」明奈は片眉を上げる。「塾は関係ないでしょ」
その通りだ。私の塾は自宅から徒歩で十分程度の距離にある。駅を利用する理由には到底ならない。私は重ねて答えた。
「塾の帰りに、アキを見つけたから」
「私を? それって後をつけてたってこと? 全然気付かなかった。ていうか、親に連絡してんの?」
「いや」私は思わず目を逸らす。「してない」
まじで、と呆れたように明奈は呟いた。
「馬鹿。今頃あんたの親心配してるよ」
塾から駅までは三十分程度。もう私の帰りが遅いことにお母さんが気付く頃だ。
だが生憎、私は携帯の所持を許されていない。学校も自宅から徒歩五分、友人も所持者はまばらでまだ必要ないと判断されたのだ。実際、それで困ったことは一度もない。これを機に買って貰えたりしないだろうか、とぼんやり考えながら、だがそれよりも問題は明奈の方だった。
「どうせ次の東条で降りるでしょ? 五分くらいで着くし、それから連絡する。そういう明奈は連絡してるの?」
「は? するわけないじゃん」
至極当然のように、それを尋ねられるのは心外とばかりに明奈は吐き捨てた。
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