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私は顔を顰める。
「自分のことは棚に上げて何言ってんの」
「私はいいの」
「何で?」
「私だから」
有無を言わせぬ物言い。
明らかに理由になっていないそれにしかし、突っ込む気にはならなかった。
『──朝だったそうよ』
お母さんの言葉が私の脳裏をかすめる。それを悟られないよう、明奈を真似て私もだらしなく背もたれに寄りかかった。
「そりゃまあ、しょうがいないか。不良するには、わざわざ電車で東条に行くしかないもんね。田舎丸出し」
自然と少し棘のある言い方になる。明奈は否定しなかった。無言の肯定。
それで結局、私はそれ以上言えなくなるのだ。
「……ホントそれ。何もなさ過ぎるのよ」
暫しの沈黙の後、私達の団地が田舎であることを嘆くように明奈が呟いた。近くにコンビニすらない地域に住む私達が遊ぶとしたら、電車で隣の東条駅まで赴くしかない。
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