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  朝が来て夜が来てまた朝が来て。 目覚めて最初に思うのが隼斗の事であっても、夏哉はそれ以上考える事をしなかった。 朝が来て夜が来てまた朝が来て。 その繰り返しの中で年を重ね、三年遅れの就活の時期に顔を出したスターゲイザーで、久しぶりに会ったレベッカと代表の広瀬先生に言われた。 「カヤ、恋をしてる?」 「恋する気持ちは体の免疫力を高めるんだ。本当に本当だから試してみるといい」 発症から二年で自分に合う薬が見つかった事はとてもラッキーだったと今ならわかる。自分で自分の腹に注射する薬を泣きながら試していた時期も今となっては思い出だ。髪は真っ白のままとは言え、月に一度の染髪のついでに小綺麗にしてもらえるし、薬さえ飲んでいれば日常生活もさほど問題ない。 大学は推薦で入った新設学科だったけれど、休学中に猛勉強して奨学金を取り、受験の数十倍の気力で学部変更テストと論文に打ち込み法学部に入り直す形になった。そして恋愛なんてまるで無縁の24才になっていた自分に気づかされた。 『就職が決まったら王子様に会いに行きます』と言うと、二人は夏哉を思い切りハグしてくれた。
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