見えたはずの未来--過去のおはなし

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それから一ヶ月後の七月に入って後半、不安は色々あるものの…私達は予定通り、入籍した。 丁度日曜日だったので、二人だけでささやかに祝った。 その頃には、結婚式のことも色々具体化していて(ゆかちゃんを考慮して進級試験の後の予定だった)「結婚指輪は、結婚式に合わせて作ろう」という話になっていた。 なので……見た目で『結婚した』という証明は、何もなかったけれど。 正直あまり会社の方は……順調とは言えなかった。 特に青山さんは…毎日忙しそうにどこかへ出掛けていた。 他の上の人たちも、いつも制作の部屋には居らず…どこかに出かけていたり、こっそり電話をしているようだった。 そんなこともあり、少しだけ後ろめたい気持ちを抱えながら、月曜日出勤した。 週一月曜日の朝礼が始まってすぐ、葛西さんが「さとりん先にどうぞ」と言うので、私は義務的に報告した。 「結婚して『佐藤』に苗字が変わりました。よろしくお願いします」とだけ簡潔に。 すると少し沈黙が続き…青山さんが、葛西さんと顔を見合せると-啖呵を切ったように、話し始めた。 「喜ばしい話の後に、皆様には……非常に申し訳ない話をします」
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