712人が本棚に入れています
本棚に追加
津田君は息をゴクリと呑み込んだ。
「多分まだ、本当の上層部しか知らないと思う。
他の部署によく行くけど……全然聞いたこともない」と。
「俊希……夫婦で同じ会社って………あんまり良くないって聞いたけど……」
咲子の顔は…心配そう。
津田君は、確かにそうだと頷く。
「昔……経理の改ざんあったらしいんだよね。夫婦がグルで。
他にもドロッドロの争いあったらしくて、それから夫婦同じ部署は禁止。違う部署でも風当たり強いし、非公式だけど社内恋愛も厳しい。
第一…本社の中枢に女子少ないのは、この為らしいよ」
陸が口を開く。
「佐藤さんの元奥さん、うちの営業事務だったらしいけど……結局あの佐藤さんでも風当たり強かったらしいよ」
一気に、ズンと空気が重くなる。
沈黙が辺りを包むが-陸が空気を切り裂くように言った。
「辞めちゃえばいいじゃん」
「陸!」と咲子が咎める。
でも津田君も……その方がいいと。
「多分Web事業部ができるってことは……三課はほぼそっちに行くよ。二課の一部も。
いくら凛が有能でも…女子からの風当たりはキツいと思うし……」
陸もそれに頷く。
「今はまだ結婚のことは一課のメンバーしか知らないけど、いずれ知ってしまうだろうし。経理にも書類出さなきゃいけない。
……隠してでも、どっかで漏れるよ、確実に」
咲子は「はぁ………」っとため息をついて言った。
「凛は…………どうしたいの?」
私が言うより前に-陸が全てを遮るように言った。
「凛がいくら続けたくても、俺は自分の奥さんを危険に晒してまで働かせたくない」
陸は私の両肩に手を置く
「いいよね、凛」
まっすぐに私を見る。
こうされると……私は頷くしかない。
頷いたけれど……咲子と津田君は複雑そうな目で見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!