見えたはずの未来--過去のおはなし

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津田君は息をゴクリと呑み込んだ。 「多分まだ、本当の上層部しか知らないと思う。 他の部署によく行くけど……全然聞いたこともない」と。 「俊希……夫婦で同じ会社って………あんまり良くないって聞いたけど……」 咲子の顔は…心配そう。 津田君は、確かにそうだと頷く。 「昔……経理の改ざんあったらしいんだよね。夫婦がグルで。 他にもドロッドロの争いあったらしくて、それから夫婦同じ部署は禁止。違う部署でも風当たり強いし、非公式だけど社内恋愛も厳しい。 第一…本社の中枢に女子少ないのは、この為らしいよ」 陸が口を開く。 「佐藤さんの元奥さん、うちの営業事務だったらしいけど……結局あの佐藤さんでも風当たり強かったらしいよ」 一気に、ズンと空気が重くなる。 沈黙が辺りを包むが-陸が空気を切り裂くように言った。 「辞めちゃえばいいじゃん」 「陸!」と咲子が咎める。 でも津田君も……その方がいいと。 「多分Web事業部ができるってことは……三課はほぼそっちに行くよ。二課の一部も。 いくら凛が有能でも…女子からの風当たりはキツいと思うし……」 陸もそれに頷く。 「今はまだ結婚のことは一課のメンバーしか知らないけど、いずれ知ってしまうだろうし。経理にも書類出さなきゃいけない。 ……隠してでも、どっかで漏れるよ、確実に」 咲子は「はぁ………」っとため息をついて言った。 「凛は…………どうしたいの?」 私が言うより前に-陸が全てを遮るように言った。 「凛がいくら続けたくても、俺は自分の奥さんを危険に晒してまで働かせたくない」 陸は私の両肩に手を置く 「いいよね、凛」 まっすぐに私を見る。 こうされると……私は頷くしかない。 頷いたけれど……咲子と津田君は複雑そうな目で見ていた。
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