見えたはずの未来--過去のおはなし

11/17
695人が本棚に入れています
本棚に追加
/293ページ
家に帰って、ご飯を食べながら陸と話す。 「なんかうちの会社、やばいかも知れない……」 そう言うと、陸の一瞬食べる手が止まった。 「……まじで?」 その言葉に、私はコクりと無言で頷く。 陸はまた食べ始めながら、こう言った。 「まぁ……結婚するんだし、もう働かなくていいんじゃない?三年以上働いたし。 新婚で再就職は、多分難しいと思うよ」 確かに…陸の言う通りだ。 無言のまま、私は俯く。 さらに陸が、畳み掛けるように言った。 「別に俺の給料でやってけるし、働きたいならパートとかでいいよ。 どっちにしろ子育て終わるまでは、なるべく家にいて欲しいから…仕事は辞めてもらうことになると思ってたんだ」 子育て、という言葉に一瞬ドキッとしたが……結婚するということは、そういうことだ。 私達は数年先の未来じゃなくて……十年、二十年先の未来を考えなければ行けない段階にきていたのだ。 すると陸は-「あっ」と何かを思い出したらしい。 「何か俺も……佐藤さんが移動するかもって話が出てるらしくて」 「えっ?」と驚く 「あの人、別に今も一課以外の仕事もしてるよね……?今更総務とかじゃないでしょ?」 陸は「だから謎なんだ」と。 「うち今さぁ、俺と佐藤さんと篠山さんの三人しか居ないんだ。課長が長期入院していて……。 これで抜けられたら……どうしようもない」 何だかお互い危機に直面している……そう思っていた。 -大きく変わる、前兆だったのだ。
/293ページ

最初のコメントを投稿しよう!