見えたはずの未来--過去のおはなし

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そう言って、机に置かれてあったプリントの束を配り始める。 「このプリントの通りに……この会社は買収されることになりました。九月には新しい会社に移ります」 葛西さんも、ようやく口を開く。 「何とか……全員高条件で移れるようになりました。共明印刷というそこそこの規模の会社なので、悪いようにはならないでしょう。 新設のWeb事業部に、私は部長代理として、青山はマネージャーとして勤務します」 私は、紙に書かれていたことに……思わず頭が真っ白になった。 「凛!?顔が真っ青!?」 異変に気付いた悠香が、私の肩を揺する。 そしてみんなの目線が-一斉に私に来る。 -嘘、だと思いたい。 でも書かれてある会社の住所…細かい内容も、紛れもなかった。 「……夫の会社です」 え?と皆が言う。 青山さんが「ごめん、もっかい言って?」と聞く。 「さっき結婚したと言った夫は………ここの制作部のデザイナーです」 みんなの目が、点になっていた。
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