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縛られるものは
そうしてこの日は定時少し過ぎて退社した。
私が先に退社すると、乗り換え駅にある大きいスーパーに寄って買い物をした。
一通り夕食の材料を買い終えて駅に向かうと…既に陸が待っていた。
壁にもたれ掛かって携帯を見ているが、近付くとすぐに顔を上げる。
そして黙ったまま荷物を受け取り、改札を抜けていく。
そして家に帰り、夕食をつくり、食べる。
シャワーを浴びて、ベッドに入る。
どこにでもいる夫婦の、普通の日常、だと思う。
一つ言うとすれば…陸は寝るときに私を抱き締めて寝る。毎日、しがみつくようにして。
それはずっと前から…付き合い始めた頃からずっと。
『凛が先に寝ないと、安心して寝れないんだ』
その言葉の通り、陸は私が寝るまで起きている。
私はいつも、陸の胸の中で眠りにつく。
たまに、夜中に目覚めることがある。
一度ベッドから降りて戻ると…必ずと言って良いほど陸も起きてしまっている。
そしてまた-しがみつくように抱きしめられて、眠りにつく。
『別に凛の問題じゃないんだ、自分の弱さの問題なんだ』
そんな彼の弱さを…私は受け止められているのだろうか。
今日もそんなことを思いながら、彼の胸の中で眠りにつくのだ。
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