既成事実

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既成事実

私は、天ヶ崎楓。名前はそれ。 追加情報としては今起きたばかりで、と言うか言い訳をすると1時間前に目覚ましを止めた記憶はあるのだけれど今起きたばかりで、まあ学校の予鈴10分前に目を覚ましたバカだ。 私服OKの学校でよかった、と思いながら寝る時に着ていたロンTの上にサイズがガバガバの黒い革のジャケットを羽織って、斜めがけの鞄を引っ掴んで家を出た。朝ごはんはいつも食べない。肩まで伸ばした髪はとかなくても走れば風のおかげでいい感じになってくれる。たぶん。 流れるようにいつものルートで教室に入ると、すぐにチャイムが鳴った。縦横かけて全部で42ある机は、3分の1ほどしか埋まっていない。見慣れた風景だ。 入ってきた先生が、席の方を一瞥して声を張る。 「えー、人数を数えますのでいまから席を立たないように」 そう言って、しばらくの沈黙。 「はい結構、えー1人だけ来ていませんが、窪田くんですね。彼はこの前の金曜日をもって辞学となりましたので、クラスは14人となりました。よく覚えておいてください」 はあい、というだるそうな声が生徒の方から漏れる。私の斜め後ろだった。     
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