既成事実

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彼の名前は相宮一紗。かずさ、だ。勘違いの起きやすい名前だけれど男子。昨日は8時間ほどたっぷり寝た私と対照的に、大分眠そうな顔をしている。会った時から毎日こんな感じの顔をしているのでいつも夜更かしをしているのか、はたまた元からこんな顔なのかは知らないけれど。 「カズ、窪田くんと仲良かった?」 体ごと首を後ろに傾けながら聞いてみると、ひとこと「いや」とシンプルな回答が返ってきた。 「正直、顔あんまり覚えてない」 なんてヤツだ。 「カエデは」 顔はなんとなく覚えている。でも人柄を聞かれると大したことは言えないかもしれない。私が自分の興味のないことにあんまり関わろうとしないから、なんだけど。 「…覚えてるよ、いちおう」 「天才じゃん」 ちょっと笑ってカズはまた机に突っ伏した。 一限が始まるまで時間があるので携帯端末をポチポチしていると、いつの間にかカズが隣の席に来ていた。教室の中は虫食いだらけの席で、私の隣はいない。だから移動したところでなんの支障もない。 「何見てんの」 「…ニュース、とか。いろいろだよ」 「たとえば?」 「仕事に従事してる人が半分を切っちゃったんだって。まああと残り3ヶ月くらいしかないんだし、無理もないか」 「それ大丈夫?世界回る?」 「…ああ、だから人工知能の導入を増やすらしいよ。大変だねえ上の人たちは」     
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