既成事実

3/3
前へ
/13ページ
次へ
「あとカウントダウンカレンダーがめちゃくちゃ売れてるらしいよ。みんなよく買うね、もうそんなに時間ないのに。あの、なんだっけ。カズが好きな歌手がプロデュースしたやつ」 「ああ、買ったわ俺も」 「買ったんかい」 私は端末をスクロールする手を止めた。 「カズはさ、」 「ん」 「世界が終わるの、楽しみ?」 「んー」 珍しく考えるような素振りを見せて、カズはやっぱりちょっと笑った。 「次に行けるって言うのも楽しみだけど、次がいいか分かんないし。カタツムリとかだったらヤダ、俺」 「皆でなんか盛り上がってんのは好きだけどさ、 カエデと離れるのは、ちょっとイヤかな」 「…どこで覚えてきたの、そんなお世辞」 カズは、え?という顔をする。こいつの事だから、ほんとにそう思ってるんだろうな。 私は今日も寝坊をして、学校に行って。帰ったらご飯を食べて、シャワーを浴びて、ろくに勉強もしないで眠るんだろう。 私たちの地球は、あと95日で滅亡するのに。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加