#1 入学式(1)

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勉強が出来ても出来ないことはこの世界に多すぎる。それが辛い。 「たとえば大勢の前で緊張せずスピーチをするとか。」 昨日の夜大急ぎで作ったスピーチ原稿を開いたり閉じたりする。 合格してから一週間ほどたったころだったろうか、僕と僕の親はなぜか御剣高校に呼ばれた。しかも校長室。 緊張しながら校長室に入った。席に着くよう示されて柔らかいソファに座った。 一呼吸置いて校長先生がしゃべったことは意外すぎる言葉だった。 「君、トップ合格だったよ。入学式でスピーチしてもらうから。」 この発言にはかなり驚いた。スピーチすんの!?僕!? 僕は一対一で話すのはまだできるけど、一対多数のスピーチとかはとても苦手だった。ずっと昔から。 青い顔をしておろおろしてる僕の隣で母さんは泣いてるし、父さんは、「凄いな!」って目を丸くしてるし、断れる雰囲気でもなかったので、 「が、頑張ります!」 と即席に返事をしてしまった。 そのあと父さんと母さんは校長先生と何か話していたけれど、余裕が無さ過ぎて僕は聞いてなかった。 膝を生まれたての子鹿のように震わせながら校長室を出て行く時、校長先生は僕にこんな言葉を投げかけた。 「そうそう。君以外にスピーチする人は四人いるよ。そんな緊張しなくても大丈夫だよ。」     
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