【Ep.1】 レフトビハインド

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 よろめきながら出口と思われる扉まで歩き、一つ深呼吸をしてゆっくりと扉を開いた。すると、鋭い光が一気に室内に射し込み、薄暗さに馴れていた視界は白く染められ、思わずその眩しさに俺は顔を背けて目を細めた。  数秒で視界は回復し、太陽に照らされ、形を得た世界が瞳へと写される。 「……町……いや村、か?」 目に飛び込んできたのは、工場などでよく見かける波型スレートで作られた建物だ。狭苦しい道の両脇に所狭しと並べられたその建物は全て一階建てで、その風貌は人が暮らす家というよりは物置や小屋に近いように感じる。まだ時間が早いのか、あまり人影は見当たらず、何人かの男が道端で横になっているのと、年端の行かぬ少女がその小屋の前で座り込んで居るくらいだ。  十代、それも前半といったところだろうか、大きめの民族衣装を身に纏い、物珍しそうな目でこちらをじっと見つめている。確かに、ここでは自分のような人間は珍しいのかもしれない。俺はその少女を尻目にして、そのまま村を見て回ることにした。マクシムの居場所は検討もつかなかったが、ここが村であるならば村長などといった、この場所を治める人物がいる筈だ。先ずはそこを探すことに決めた。
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