ひとりぼっち

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 すると入口の方で、かすかに光が差しているのが見えた。  一人ぼっちで暗い穴に、ずっとこもっていた原始人は、その光に導かれるように、洞窟の中を、這って行った。  外はずっと静かだった。  毎日しんしんと雪が降り、空は厚い雲に覆われて、凍えるような寒さだった。  けれども、この時、原始人が這って行くと、どうも外の様子がそれまでとは違うみたいだった。  何やら外は明るく、騒がしかったので、ついには、その暗い穴から、原始人は這い出してきたのである。  なんと外には、これまでに無いほどの光が溢れ、暖かく、いつの間にか、季節はすっかり春になっていた。  原始人は春風に吹かれながら、花々が咲き乱れるのを発見し、一部の花からは、その春風に乗せて胞子が飛ばされ、鳥たちは空で歌を歌いながら戯れ、蝶が花から花へと、飛び回っているのを初めて目撃した。
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