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なんて美しい世界なんだ。
原始人はその光景を、飽きずにいつまでも眺めていることができた。
春風がラベンダーの香りをどこからか運んできて、原始人をうっとりとさせた。
太陽の光が燦々と柔らかく、降り注いでいるのを見ると、原始人は周りをはばからずに、鼻頭を持ち上げ、大きな口を開け、特大のくしゃみを気持ちよくした。
地上の生き物は、いずれもが大喜びで、長い冬が終わったことに興奮して、気分は沸き立ち、はしゃぎまわっていた。
やがて、陽が傾き、夕方になって、辺りが紅く夕陽に染まると、原始人はまた、それに見とれた。
そして間もなく、ひんやりとした夜の帳にすっかり包まれると、原始人は闇の中で、また目をきょろきょろと動かした。
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