黒い日光

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確かに、地下は避難空間として完璧だ。地下であれば、黒い日光に対抗する条件がそろっているからだ。  条件の一つは、黒い日光が消滅させるのは“生物”のみであるという事。人、草、木、動物、虫、命あるものは全てこの日光の影響で灰となる。  だがコンクリートなどの建物は影響を受けない。だから『明けない夜』の日、窓辺に駆け寄った者以外の屋内にいた者は影響を受けずに済んだという情報もある。あくまで消滅したのは、日光を受けた者だけだからだ。 そして二つ目、これは地上で生きる者にとって生き残る知恵と言っていいだろう。それは、“影”がある場所であれば安全だという事だ。建物、物陰、最悪自分の所有物で作った影でも有効だ。  その説は確かだ。僕はあの日、それを目の前で確認した。母さんが僕の前で灰になった時、母さんは日向に、僕は日陰に居た。僕は影響を受けず、母さんの足元が黒く染まったのを最後に、消えたからだ。  アスファルトという強い味方と常に影と共にある地下。絶好の場所であり、誰もがその存在に飛びついた。今じゃ地下は人で溢れ、地下街などには無法な簡易テントが至る所に張り巡らされている。     
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