0人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
黒い日光
「あ」
隣で立ち止まり声を出した母を振り返る。
「どうした?」
母さんはこちらを見たまま、一言どころか一歩たりとも動こうとしない。口を開いたまま、僕を見ている。恐怖、絶望、そして、諦め、と表情を変えていった。
目が、僕の頭上よりもずっと上を、ジッと見つめた。ああ、そうか、母さんはもう、助からない。
そう思ったのと同時に、母さんが目の前から消えた。
――
約三年前、世界中のありとあらゆる生物の4分の3ほどを消滅させた自然現象が地球を襲った。
その現象は今まで起こってきた数々の自然現象とはかけ離れた、最も異質なものだった。
日光が黒い。
一言で言えば、だ。
通常日光というものは白い。というのも、その白自体は人間の目にそう見えているだけで本来の現象の“色”ではない。
日光の本当の”色”を知らない身からすれば日光が黒いという事を否定するのもおかしな話だが、僕たちは生まれてからずっと、日光は白いものとして認識して生きてきた。
だからこの“黒”の日光に違和感を感じ、そして黒という色が持つ“恐怖”という感情が同時に芽生えたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!