一.

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一.

「ちょっと! 姉ちゃん!!!!  オレのケーキ食ったろ!!?」 階段の上に向かって怒りをぶつけるのは健太(ケンタ)だ。 「何? ケーキ??  知らないわよ そんなの!  どこに置いてあったのよ!」 上階からいぶかしげな顔だけのぞかせているのは姉の祥子(ショウコ)である。 「台所の机の上だよ。  ほらひと口だけかじってある」 キッチンのテーブルにはケーキをのせた皿がひとつ。 ラップがやぶかれ、端が大きくえぐられた様子だ。 「今朝ボクが家を出るとき、残っていたのは姉ちゃんだけだ。  ケーキにラップをしたときは何もかじられてなかった」 ケンタは探偵気取りで状況の整理を始める。 「学校が終わって、最初に帰ってきたのがボク。  そのとき家は留守だった。  そしてボクは2階で宿題を始めた。ケーキの状態は確認していない。  宿題の途中で姉ちゃんが返ってきた音が聞こえた。  宿題を終えて台所に行くと、そこにはかじられたケーキがあった」 姉は無表情で名探偵の演説を聞いている。 「つまり、ボクが最後にケーキを確認した後から  この状態を確認するまでの間、ケーキを食べることができるのは  姉ちゃんだけ、ということ」 「その理屈はおかしいわね」 階段を下りながらショウコは続けた。
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