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巻戻しカメラ
リクは人を探しているふりをして、のぞきこんだ。
すぐ横で老夫がカメラを構えている。十センチもない液晶モニターには、ベンチに並んで座る、顔のよく似た三姉妹が映っていた。髪型と服装の趣味が違うものの、三つ子のようだった。
レンズが向けられた先、被写体の三人にリクは視線を移す。リクは口を開き、思わず声を漏らしそうになるのをなんとか堪えた。
──すげえな。
色の褪せた黄色のベンチに腰掛け、ポーズを取っていたのは、確かに三人の女性には違いなかった。が、カメラのディスプレイに映る姿とはまるで別人だった。
いや、左の少女だけはそのままだ。けれど、右に座っていたのは少女の母親らしき中年の女性で、真ん中で穏やかに微笑んでいるのは老婆だった。モニター上ではベンチの黄色も新品のように鮮明だった。
「おじいちゃん、どう?」
少女が駆け寄る。母親と、そのまた母親らしき二人も、顔に笑みを浮かべたまま、おじいちゃんと呼ばれたカメラマンのもとに歩いていく。
辺りを見渡すと、足元に人工芝が敷かれた直径二十メートルほどのエリアは、同じような家族連れであふれていた。
「いかがですか?」
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