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早送りカメラ
リクの事務所は自宅でもあった。同居人のカイと共同生活を送り、どちらもフリーのプログラマーとして生計を立てていた。
「おかえりー」
飼い犬とじゃれ合っていたカイの挨拶にも気づかず、ドアを開けるとリクはすぐにコンピュータの前に座った。そして「未来カメラ」と検索をした。けれど、それらしい商品は一切ヒットしなかった。
──やっぱり、ない。
リクはますます興奮した。届いていたパンフレットに目を通し、細かな仕様からどういうプログラムで実現しているのかを汲みとっていく。
デスクの横のホワイトボードに思いついたアルゴリズムを殴り書きしていった。おおよその見当をつけたところで、実際にコードを打ちはじめた。
***
「だめだ……」
日が沈み、外が暗くなるまで格闘したものの、肝心の時間を操作する部分がどうなっているのか、どうしてもわからなかった。
「仕事?」
リクの溜め息のような声に、カイがモニターの前にやってきて訊いた。リクは首を振り、ようやく事情を説明した。
なるほどね、と呟いたカイは、
「特許があるなら、申請書類を見れば?」
と言った。リクはまた首を振る。
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