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「見た。こういう理論で可能だって書いてるだけで、肝心な部分は隠されてる」
そりゃそうか。とカイは顎をさわりながら天井を見上げる。そしてたっぷりと間をとってから言った。
「危険だけど、あそこなら、いるかもよ。もうバラしたやつ」
カイの言っていることが、リクにはすぐにわかった。
「──ああ。あそこか」
QQQと呼ばれる、プログラマー専用コミュニティーサイトの裏掲示板。そこでは様々なプログラマーが腕を競うように、匿名で解読したアルゴリズムやプログラムを違法に公開・配布が行われ、数えるほどとはいえ逮捕者も出ていた。アップロードだけでなく、違法プログラムをダウンロードすることも、もちろん罪になる。
「その前にだけど、未来は、さ。ダメじゃん」
カイの言葉に、ショッピングモールにいた、子どもに説明する母親の声が、リクの脳内で蘇える。
──未来はね、見ちゃいけないことになっているのよ。未来のことがわかったら、つまらないでしょう?
後半は、子どもを説得するための方便に過ぎなかったが、前半は事実だった。職業柄、リクは本当の理由を知っていた。
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