早送りカメラ

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 それから五日間、リクは巻き戻しカメラの解読、そして時間を未来に早送りするための変換に没頭した。コンピュータのない自室には一度も戻らず、眠くなると熱いシャワーを浴び、コーヒーを飲み、眠気と疲労が限界に到達したときにだけ、椅子にもたれて仮眠をとった。作業がある程度進むたび、カイにプログラムの確認をしてもらい、自身のコンピュータ内で擬似テストを行った。 「でき、た」  リクがつぶやき、驚いたカイがモニターをのぞき、膨大な量のソースコードを上に下に、何度もスクロールした。 「すごい。確かに、これなら……」  脱力し、椅子にもたれようとしたリクの肩をたたき、カイは眠る前に一刻も早く電子特許申請をしておくべきだと言った。さらにカイは、部屋から旧式のカメラを持ってきて「使っていいよ」と手渡した。液晶モニターのついていない、いまとなっては珍しい型だった。  リクは急いで電子特許申請を出し──早送りカメラと名付けた──、未来を見ることができるプログラムを、カイのカメラへ転送した。膨大なプログラムのため、転送には三時間以上かかりそうだった。それを確認したリクは、転送開始ボタンを押すと、気絶するように眠りについた。
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