開口一番・開幕

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 そんな忘却への努力を、毎晩のように努めました。  にも拘わらず、次の日には公演情報を元手に再度師の目前まで辿り着いてしまいます。  普段何事にも飽き性短気の怠け者である私が、毎度リトライへと向かっている不思議。  コンティニューの道中を歩いている事にハッと気付き、いつも自らで驚いて不思議がり、つつも気分は高揚し、「さて、今日はどの手で攻めるか」との策略へと思考を巡らせる楽しさがありました。  といえ、今ではもはや説明不可能。あの情熱とひたむきはどこへやら。  その後、あまりのしつこさを見せたことで、日に日に少しずつではありますが、私への興味を微々にお持ちになっていることが、師が施す私への接し方を見ればもう明らかでした。  興味関心を私なんかに持って下さっていることを察す度、心はまた弾み、また次の日も会いに行けるエネルギーが溜まりました。  私が師へ日課のように繰り返し続けたこと、これはもはや『ストーキング巡礼』と呼ぶに相応しいとても傍迷惑なものであったと思います。しかし、それでも諦めることなど到底出来ぬように頑固な片意地が、私の中へは既に出来上がっていたようなのです。
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