序章

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 対して、破落戸集団の一人は告げる。 「だから、言ってんだろうが! 俺たちは、別に『いたいけな少女』に向かっている訳じゃあない! お前がいたいけな少女だと思っているのは、」 「さっきからいたいけいたいけうっさいんじゃぼけがあああああああああああああ!!」  ドガッシャア!! とコンクリートが弾ける音がした。  そしてそれは、彼らにとって『恐怖』の対象と化す。  ただのいたいけな少女ではなく――それは紛れもない、魔術師であった。 「ひ、ひええっ。だから、言っただろう? ほ、ほら、謝れば俺たちは何もしねえよ。だから、さっさと謝れよ」 「謝れ………………だあ?」  少女の髪は、静電気か或いは力が溜まっているのか浮かび上がっているように見える。  それを見て、少年は恐る恐る帰ろうとするが――。 「おい、ちょっと待てよそこの」 「俺は何も悪いことしてねえだろ!?」  ちなみに破落戸集団は、先程の「謝れ………………だあ?」の言葉ですっかり覇気を失ってしまったらしく、さっさと退散していた。少年もさっさと退散していれば良かったものを、運悪く、本当に運が悪く、少女に見つかってしまったといったところだ。 「悪いことしてねえ、というか、こっちが一人で解決しようとしているところに首を突っ込むんじゃねえよ? あんたは正義の味方か何かですか?」 「何だろう!! さっき言われた気がするその発言!!」 「うっさい! うっさいんじゃぼけが!」 「あと一応言っておくけれどお嬢様中学の制服を着ている割りには口が悪すぎないか!?」  そう。  彼が助けようとした理由の一つに――彼女が着ていた制服が、純禮院学園(じゅんれいいんがくえん)の制服だったということが上げられる。純禮院学園はいわゆる『お嬢様学校』であり、そこに入っている学生は皆優秀な魔術師なのだ。……もっとも、後半の部分を少年が理解していたかどうかはまた別の話だが。  つまり、彼が助けようと助けなかろうと、そもそも優秀な魔術師であるのだから、彼女たち自身の力でそんな破落戸集団なんて簡単に倒せる訳であって。 「だ、か、ら、別に助けを貰う必要なんて無かった訳。分かる?」 「あの、どうして正座をし講義を受ける必要があるのでございませう?」
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