花浅葱:回想

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アップをしたいところだが、炎天下に晒されにいくのは少々覚悟を決める必要がある 普段から太陽の下で日々練習しているやつが何を言ってんだと思うかもしれないが、同じ炎天下でも大会と練習では心もちが違うのだ 時間にしたら練習時の方が長く日差しを浴びているだろう だが練習とは明らかに違う点が大会にはいくつもある 等間隔で訪れる風の音さえ聞こえるほどの静寂 それを突き破るスタートの銃声 無音モードを解除したかのように一斉に響き渡る歓声 観衆選手の熱 火薬の匂い……… どれひとつとっても練習にはないものだ これらの要素一つ一つが気持ちを高ぶらせ、緊張させる でも暑さで体が温まっていても走らないことには100%の実力を出すことは出来ないので意を決してテントの外にでることにする 競技場の外周を軽くジョギングし始めること数歩、すぐに汗が滲みだし頬を伝い流れ落ちていく 場内と違ってコンクリートの地面は下からも容赦なく熱を叩きつけてくる ジョギングもそこそこにストレッチ、体操を入念に行い、数本全力ダッシュをする
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